有機溶媒系スプレードライの特徴(密閉系)|難溶性薬物の吸収改善

乾燥させる熱風に窒素ガスを用いることにより、可燃性である有機溶媒の乾燥が可能である点が有機溶媒系スプレードライの特徴です。主に水には溶解しにくい難溶性薬物などを、有機溶媒に溶かしてスプレードライ加工するために利用されます。

固体分散体の製造

難溶性薬物の吸収改善技術である固体分散体の製造についても、有機溶媒系スプレードライヤーなら容易に行うことができます。新たに開発される新薬において難溶性薬物が著しく増加していることから、有機溶媒系スプレードライヤーによる加工は、溶解性改善の手法として注目されています。

富士化学工業では有機溶媒系スプレードライヤーを用いて、医薬品に難溶性薬物の改善などの付加価値を加えた機能性原薬など、さまざまなソリューションを提供しています。

 

固体分散体とは

固体状態で不活性な担体又はそのマトリックス中に、1種類またはそれ以上の活性成分が分散したもの(W. L. Chiou, S. Riegelman: J. Pharm. Sci., 60, 1281, 1971)と定義されるもので、製造法としては溶融法、溶媒法、溶融・溶媒法、加熱溶融混練法などが知られています。

特に難溶性薬物を非晶質固体分散体とすることにより、溶解性やバイオアベイラビリティの飛躍的な向上や、空腹時と満腹時の血中濃度に差がなくなることなどが知られています。

スプレードライヤーを用いることで、例えば、薬物と高分子担体を有機溶媒に溶解後、スプレーして乾燥するという単純な操作で容易に固体分散体を製造することが可能です。

 

難溶性薬物の吸収改善

近年、薬効が期待される新薬候補化合物が、難溶性を理由に、開発が困難な状況に陥るケースが増加しています。難溶性薬物の吸収改善に有効な技術である固体分散体の製造についても数多くの実績があります。

開発段階に応じて適応可能なスプレードライヤーを複数所有しており、開発初期から商用生産にまで対応可能です。

富士化学工業で可能な固体分散体製造
  • 固体分散体処方検討
  • 動物試験用サンプルの製造
  • 治験薬の製造
  • 商用生産

既に、日米欧を含む世界各国で発売されている医薬品にも利用されており査察実績も豊富です。また、後工程の錠剤、カプセル剤の製造も可能ですので、スプレードライから包装までの一貫対応もお問い合わせ下さい。

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製法の違いによる非晶質固体分散体の相違

非晶質化の比較(スプレードライ、溶融法、エバポレーション法)スプレードライ加工、溶融法、エバポレーション法で製造したアセトアミノフェンの固体分散体(アセトアミノフェン:PVP=1:0.35)のXRD(X線回折法)パターンを示しました。

スプレードライ加工品のみがハローパターンを示し、他の製造法よりも少ない担体量で非晶質化することを示しています

安定性
固体分散体の安定性比較(スプレードライ、溶融法、エバポレーション法))スプレードライ加工、溶融法、エバポレーション法で製造したアセトアミノフェン:PVP=1:1の固体分散体を、60℃で24時間放置した後のXRDパターンを示しました。
製造直後はいずれもハローパターンを示していましたが、24時間後ではスプレードライ加工品のみがハローパターンを維持しており、他の製造法よりも高い安定性を示しています。

 

溶解性改善

固体分散体の溶出量インドメタシンとPVPからなる固体分散体の溶出試験結果を示しました。スプレードライ加工したインドメタシンとPVPの固体分散体は、物理混合品の約6倍の見かけの溶解度を示しています。過飽和状態を長時間維持することが、薬物の吸収改善に繋がります。

 

 

 

血中動態改善

原薬(API)と固体分散体のラット血中動態比較原薬(API)とその固体分散体のラット血中動態測定結果をグラフ化しました。原薬の粉砕品に溶解補助剤を使用した製剤に比べ、固体分散体は高いAUCを示しました。

 

 

 

 

スケールアップの手順

富士化学工業では、少量検討用からコマーシャル生産用までのさまざまなサイズのスプレードライヤーを保有しています。

ラボから商用生産までのスケールアップ