無水リン酸水素カルシウム(Anhydrous Dibasic Calcium Phosphate)は嵩が低く、中性であるため反応性の少ないた直打用賦として幅広く利用されています。
富士化学工業では、独自の結晶抑制合成法とスプレードライ技術を用い、優れた流動性と圧縮特性と持つと同時に、崩壊剤との併用により崩壊助剤として錠剤を急速に崩壊させる無水リン酸水素カルシウム(製品名:フジカリン)を開発しました。ここでは、フジカリンの特徴について、従来品と比較しながら紹介します。
Contents
フジカリンの基本情報
商品名 | フジカリン |
一般名 | 無水リン酸水素カルシウム (Anhydrous Dibasic Calcium Phosphate) |
化学式 | CaHPO₄ |
公定書名 | JP:無水リン酸水素カルシウム USP/NF:Dibasic Calcium Phosphate EP:Hydrogen Calcium Phosphate, Anhydrous |
外観 | 白色の結晶性の粉末又は粒 |
溶解性 | 水、エタノールに不溶 |
フジカリンの物性
無水リン酸水素カルシウムは、嵩が低く吸水性能が小さく、また水懸濁液のpHが中性であるため、一般的に他剤との反応性の少ない添加剤として用いられています。
しかし、従来の無水リン酸水素カルシウムの持つ機能では、直接打錠法にとって十分とは言えず、特にその成形性は他の直打用添加剤と比較した場合かなり劣っています。
フジカリンは独自の結晶成長制御法により製した無水リン酸水素カルシウムを噴霧乾燥(スプレードライ)して得られた球形造粒物です。無水リン酸水素カルシウムの結晶構造を持ちますが、X線解析パターンは若干ブロードで、その一次粒子は微細で薄く鱗片状です。
更に噴霧乾燥する事により、鱗片状の結晶がカードハウスのような構造をとり、空隙率の大きな造粒物を形成しています。この構造が従来の無水リン酸水素カルシウムにはないフジカリンの特性(成形性、吸油性)を生み出しており、特に直打用賦形剤として適しています。
フジカリンと従来の無水リン酸水素カルシウム/リン酸水素カルシウム水和物との物性比較
物性 | 無水リン酸水素カルシウム | リン酸水素 カルシウム水和物 |
|
フジカリン | 従来品 | ||
平均粒子径* | 120μm | 45μm | 127μm |
嵩比容積(疎充填) | 2.3mL/g | 1.3mL/g | 1.2mL/g |
嵩比容積(密充填) | 2.0mL/g | 0.9mL/g | 1.1mL/g |
安息角 | 30° | 42° | 35° |
BET比表面積 | 40㎡/g | 0.7㎡/g | 0.57㎡/g |
吸油量 | 1.1mL/g | 0.4mL/g | 0.2mL/g |
吸水量 | 1.2mL/g | 0.5mL/g | 0.2mL/g |
*篩試験
他社無水リン酸水素カルシウム/リン酸水素カルシウム水和物との圧縮成形性の比較
DCPA:無水リン酸水素カルシウム
DCPD:リン酸水素カルシウム水和物
フジカリンの特徴まとめ
- 圧縮成形性が高く、他の無水リン酸水素カルシウムより高い硬度の錠剤が得られます。
- 高い打錠圧でも高い空隙率を保ちます。
- 流動性が高く、混合均一性に優れています。
- 導水性があり、崩壊助剤としても使えます。崩壊剤と組み合わせることで、崩壊性の高い錠剤を作ることが出来ます。
- その形状と成形性能から、従来の無水リン酸水素カルシウムと比べ打錠機を摩耗させる心配がありません。
フジカリンの使用例
フジカリンは上記特性を活かし、次のような用途で利用されています。
- フジカリンは乳酸菌製剤の製造にも用いられています。低水分であり低打錠圧での製剤化が可能な事が菌体活性の保持に役立っています。
- フジカリンの崩壊助剤効果を利用したOD錠も上市されています。
- フジカリンの吸油能を利用したSEDDS製剤の錠剤化の研究事例も紹介されています。
- 乾式造粒工程でフジカリンを微結晶セルロースと共に添加するケースも増えてきています。