メタケイ酸アルミン酸マグネシウム「ノイシリン®」|基本物性とグレード一覧

富士化学工業では、同組成でありながらも嵩比容積、水分、粒子形状、4%スラリーpHなどの異なる各種タイプや、制酸剤としての制酸効果を高めたノイシリンA(一般名:ケイ酸アルミン酸マグネシウム)など、全13グレードを製造し、それぞれの用途に応じて利用されています。ここでは、ノイシリンの基本情報と全13グレードの違いについて紹介します。

ノイシリンとは

ノイシリン(一般名:メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)は、1954年に富士化学工業によって開発された制酸剤です。国内外で高く評価され、胃腸薬製剤の原料として広く利用されております。

さらに、吸油能、流動性および圧縮成形性など、物理化学的にきわめて優れた製剤特性を持ち、流動化剤、固結防止剤、結合剤、崩壊助剤、吸着粉末化剤として、医薬品のほかにも化粧品や化成品などの品質改善に広く用いられています。

 

ノイシリンの基本物性

 

ノイシリン

製品名 ノイシリン
一般名 メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
(Magnesium Aluminometasilicate)
組成
(乾燥物換算)%
Al₂O₃:29.1~35.5
MgO  :11.4~14.0
SiO₂  :29.2~35.6
公定書名 JP:メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
USP/NF:Magnesium Aluminometasilicate
EP:Magnesium Aluminometasilicate
外観 白色粉末、微粒、細粒
結晶系 非晶質(アモルファス)
溶解性 水、アルコールに不溶、無機酸、苛性アルカリに一部可溶
熱安定性 安定

 

ノイシリンA

製品名 ノイシリンA
一般名 ケイ酸アルミン酸マグネシウム
(Magnesium Aluminosolicate)
組成
(乾燥物換算)%
Al₂O₃:27.0~34.3
MgO  :20.5~27.7
SiO₂  :14.4~21.7
公定書名 JP:ケイ酸アルミン酸マグネシウム
外観 白色粉末、微粒、細粒
結晶系 非晶質(アモルファス)
溶解性 水、アルコールに不溶、無機酸、苛性アルカリに一部可溶
熱安定性 安定

 

ノイシリンの特徴

ノイシリンは比表面積が非常に大きく、高い吸油、吸着能をもち、また、圧縮成形性にも大変優れています。その他、使用用途が非常に多く様々な製品に配合されています。ここでは、ノイシリンがどのような用途で使われるのかを紹介します。

 

ノイシリンの物性利用

ノイシリンは賦形剤として様々な利用方法があります。

 

優れた制酸活性

ノイシリンは胃腸薬や解熱鎮痛剤の有効成分としての実績が豊富です。

 

ノイシリンのグレード一覧表

ノイシリンは13グレードありますので用途によって使い分けが可能です。全13グレードの物性をまとめました。

全グレードの比較、印刷用はこちらの一覧表をご利用下さい

以降のグレード表は、この一覧表を一部編集し、ソート機能を付与したものとなります。グレード選定の際にご利用下さい。

 

アルカリ性グレード

胃腸薬の制酸剤、解熱鎮痛剤の胃粘膜保護、物性利用の他、アルカリ性である特徴から特定の原薬の安定化剤としても使われます。

特にノイシリンA(ケイ酸アルミン酸マグネシウム)の制酸力は250mL/g以上となりますので、胃腸薬の制酸剤への配合が適しています。

※ 項目クリックで昇順、降順に並び替え出来ます。

ノイシリン
グレード
外観
性状
乾燥減量
(%)
嵩比容積
疎充填(mL/g)
嵩比容積
密充填(mL/g)
平均粒子径
(μm)
安息角
(α)
吸油量
(mL/g)
吸水量
(mL/g)
制酸力
(ml)
4%スラリー
pH
FH1 白色粉末 13-20 2.9-3.7 2.2-2.8 17 - 1.3 1.0 210以上 8.5-10.0
FH2 白色粉末 5以下 3.0-4.0 2.1-2.9 17 - 1.5 1.3 210以上 8.5-10.0
FL1 白色粉末 13-20 5.2-6.5 3.4-4.4 7 - 1.4 1.2 210以上 8.5-10.0
FL2 白色粉末 5以下 5.4-6.6 3.5-4.5 7 - 1.5 1.3 210以上 8.5-10.0
S1 白色微粒 13-20 2.7-3.3 2.3-2.8 120 30 1.3 1.0 210以上 8.5-10.0
S2 白色微粒 5以下 2.7-3.4 2.4-2.9 120 30 1.4 1.2 210以上 8.5-10.0
SG2 白色微粒 8-12 2.7-3.3 2.4-3.0 220 25-32 1.4 1.2 210以上 8.5-10.0
A(AS) 白色微粒 9以下 2.3-3.3 1.8-2.6 120 30-40 1.05 1.15 250以上 8.5-10.0
A(AF) 白色粉末 9以下 2.9-3.8 2.1-3.6 10 - 1.05 1.15 250以上 8.5-10.0

 

備考
  • A(AS)、A(AF)はケイ酸アルミン酸マグネシウムであり、その他グレードのメタケイ酸アルミン酸マグネシウムとは異なる成分となります。
  • A(AS)を粉砕したものがA(AF)となります。

 

中性グレード

流動性促進や固結防止等の物性利用として採用頂くケースが非常に多いグレードとなります。

※ 項目クリックで昇順、降順に並び替え出来ます。

ノイシリン
グレード
外観
性状
乾燥減量
(%)
嵩比容積
疎充填(mL/g)
嵩比容積
密充填(mL/g)
平均粒子径
(μm)
安息角
(α)
吸油量
(mL/g)
吸水量
(mL/g)
制酸力
(ml)
4%スラリー
pH
US2 白色微粒 7以下 5.5-7.5 4.5-6.2 120 30 2.7-3.4 2.4-3.1 210以上 6.0-8.0
UFL2 白色粉末 7以下 9-18 6-10 9 - 2.7-3.4 2.4-3.1 210以上 6.0-8.0
NS2N 白色微粒 5以下 4.0-6.0 3.0-5.0 120 30 2.0-2.4 1.8-2.2 210以上 6.5-7.5
NFL2N 白色粉末 5以下 8-12 5-7 8 - 2.0-2.4 1.8-2.2 210以上 6.5-8.0

 

備考
  • US2を微粉砕したものがUFL2、NS2Nを微粉砕したものがNFL2Nとなります。

ノイシリンのグレード比較

ノイシリンAを除くと11グレードあり、パウダー品とスプレードライ品に分類されます。さらに、それぞれ次のように分類する事が出来ます。

 

パウダー品

タイプFH
FH1:重質・普通水分
FH2:重質・低水分
FHタイプ電子顕微鏡写真

×20,000

比表面積、嵩比容積が小さく取扱が便利です。

タイプFL
FL1:軽質・普通水分
FL2:軽質・低水分
NFL2N:中性・軽質・低水分
FLタイプ電子顕微鏡写真

×4,000

比表面積、嵩比容積が大きく幅広い用途に用いられます。

タイプUFL
UFL2:中性・特軽質・低水分

UFLタイプ電子顕微鏡写真

×20,000

比表面積、嵩比容積及び吸油量の非常に大きい粉末で、少量添加により物性が改善されます。

※タイプ欄中Fはパウダー品を、Hは重質品を、Lは軽質品を、Uは特軽質品を、添字1は普通水分品を、添字2は低水分品であることを示します。

 

スプレードライ品

タイプS
S1 :微粒・普通分子
S2 :微粒・低水分
US2:中性・微粒・特軽質・低水分
NS2N:中性・微粒・低水分
Sタイプ電子顕微鏡写真

×400

球状の微粒子で流動性がよく、直接打錠用製剤などに繁用されています。

タイプSG
SG2:細粒・低水分
SGタイプ電子顕微鏡写真

×10,000

散剤細粒に該当する極めて流動性のよい球状粒子です。

※タイプ欄中Sはスプレードライ品の微粒品を、SGスプレードライ品の細粒を、Nは中性品を 、Uは特軽質品を、添字1は普通水分品を、添字2は低水分品であることを示します。

 

ノイシリンの粒度

ノイシリンの微粉末は、およそ0.1μmの微細な1次粒子の凝集体で、2次凝集粒子と呼ばれるものです。その大きさをレーザー回折粒度分布計で測定しますと、FHタイプでおよそ1~90μm、FLおよびUFLタイプでおよそ1~40μmとなります。

.ノイシリンUFL2の粒子(2次凝集粒子)

ノイシリンUFL2の粒子(2次凝集粒子)

 

スプレードライ品の粒度分布比較

ノイシリンの粒度分布

 

グレード別の嵩比容積比較

ノイシリンの嵩比容積比較

嵩比容積(ルーズ値)測定法
100mlのメスシリンダーにガラス管を挿入し、試料をガラスロートを用いてガラス管内に入れる。ガラス管を静かに引き抜いて(試料容積90~100mlとなる様に充填)柔軟なハケで表面を静かに平らにする(下図参照)。このときの容積(Vml)および試料の重量(Wg)を測定し、次式によって求める。 嵩比容積(ルーズ値)(ml/g)=V(ml)/ W(g)

 

グレード別の吸油量比較

ノイシリンの吸油量比較

吸油量測定法(JIS K5101)
試料1gをガラス板にとり、煮アマニ油をビューレットから少量ずつ試料の中央に滴下し、そのつど全体をヘラで、じゅうぶんに練り合わせる。滴下および練り合わせの操作を繰り返し、全体が初めてかたいパテ状の一つのかたまりとなり、鋼ヘラでラセン形に巻き起こされるようになったときを終点とする。

 

ノイシリンの含有水分

ノイシリンの含有水分は、吸着水と構造水の二つに大別されます。吸着水は70~150℃で放出されAl₂O₃・MgO・1.7SiO₂・7H₂O(乾燥減量※)16%のFL1の場合)からAl₂O₃・MgO・1.7SiO₂・4H₂O(乾燥減量0%)となり、この過程で3分子の水が脱離します。150℃以上では段階的に重量の減少がありますが、これは主として構造水の縮合脱水によるもので、800℃では構造水は全て脱離します。

乾燥減量試験条件
温度:110±1℃
試料の量:1g
乾燥時間:7時間
乾燥器:送風式乾燥器

 

 

グレード別の吸湿速度曲線と吸湿平衡曲線

ノイシリンは相対湿度が70%以下ではあまり吸湿せず、70%を越えると吸湿能は急激に増加します。したがって、潮解性粉末など湿気を吸いやすいものに添加することにより粉末の固結化を防止します。

 

吸湿速度曲線

吸湿速度曲線37℃ RH53%

 

吸湿速度曲線37℃ RH75%

 

吸湿速度曲線37℃ RH92%

 

吸湿平衡曲線

 

ノイシリンの用途別の添加量(%)

用途  FH1   FH2   FL1   FL2   S1   S2   SG2   NFL2N   NS2N   UFL2   US2 
流動性改善               0.5-5   0.5-5  
成形性改善 5-20 5-20 5-15 5-15 5-20 5-20 5-20 1-10 1-10 1-10 1-10
崩壊助剤 5-20 5-20 5-15 5-15 5-20 5-20 5-20 1-10 1-10 1-10 1-10
固結防止 0.5-5
吸着粉末化 30-70 30-50  
増粘剤 1-3