ノイシリンの成形性と崩壊助剤効果

ノイシリンは低圧で高い硬度を可能とする一方で、崩壊助剤としての効果にも優れています。ここでは、ノイシリンの成形性と崩壊助剤効果について紹介します。

ノイシリンの成形性

ノイシリンを配合する事で、粒粉体の充填性や圧縮特性、更に錠剤の重量偏差、硬度が大きく改善されます。

 

ノイシリンの単味成形性

ノイシリンで成形性の高いグレードはUS2とUFL2となります。
(US2はスプレードライで製造したグレードであり、UFL2はUS2を粉砕したグレード)

また、スプレードライ品ではありませんが、FL1、FH1においても比較的高い成形性を持ち、低圧で高い硬度の錠剤の製造が可能です。

 

ノイシリンの成形性比較

以降、ノイシリンの配合により硬度が改善された事例を紹介します。いずれの事例も少量添加で硬度改善が可能となっています。

 

乳糖処方へのノイシリンUS2配合による成形性比較(直打)

ノイシリンを単味で打錠した場合、高い硬度の錠剤を製造出来ますが、5%~15%の添加においても低圧で硬度改善が可能です。

以下のグラフは乳糖処方にノイシリンUS2を5%~15%添加した結果となります、

乳糖へのノイシリン添加による成形性改善効果

検討処方:

  • 乳糖にノイシリンUS2を5%~15%添加。比較として結晶セルロースを使用。各処方、ステアリン酸マグネシウムを1%添加。

 

打錠条件:

  • ロータリー打錠機使用(500mg/錠、11㎜Φ、15R杵)

 

結果:

  • ノイシリンUS2を5%~15%添加した結果、成形圧に比例して十分な硬度が得られた。
  • 結晶セルロース添加時と比較しても、より少量の添加で高い硬度の錠剤を製造出来る事が確認出来た。
    (ノイシリンUS2 10%添加時と結晶セルロース15%添加時が近い結果となった)

 

コンスターチ・乳糖処方へのノイシリンUFL2の配合による成形性比較(湿式造粒)

湿式造粒においてもノイシリンの添加により硬度改善が期待できます。以下のグラフはコンスターチと乳糖を造粒する際に、ノイシリンUFL2を添加し、その顆粒を打錠した結果となります。

 

湿式造粒時のノイシリン添加による成形性改善効果

検討処方:

  • コンスターチ/乳糖(70/30)配合処方にノイシリンUFL2等を5%~15%添加。
  • ステアリン酸マグネシウムを除く原料を混合し、適量のイオン交換水で練合する。押出顆粒を作り一晩乾燥後、篩過した顆粒にステアリン酸マグネシウムを0.5%添加。

 

打錠条件:

  • タブレッティングテスター使用(500mg/錠、11.3mmφ平杵)

 

結果:

  • ノイシリンUFL2を5%~15%添加した結果、成形圧に比例して十分な硬度が得られた。
  • 同様の方法でシリカと比較した結果、ノイシリンUFL2添加時の方が少量で高い硬度を得る事が出来た。

 

ノイシリンの崩壊助剤としての効果

ノイシリンUFL2は細孔を通して急速に錠剤内部へ水を浸透させる性質があります。この導水効果により錠剤の崩壊性改善が可能となります

以下のグラフは、カルメロースカルシウムを崩壊剤として、またメチルセルロースを結合剤として用いた乳糖を主とするA処方(カルメロースカルシウム 5g配合)、B処方(カルメロースカルシウム 3g配合)において、ノイシリンUFL2を加えた処方での崩壊性を調べたものとなります。

ノイシリンの崩壊助剤効果

検討処方:

  • A処方 乳糖:85g、メチルセルロース:15g、カルメロースカルシウム:5g 、Mg-St:2g
  • B処方 乳糖:85g、メチルセルロース:15g、カルメロースカルシウム:3g 、Mg-St:2g

     

    結果・考察:

    ノイシリン添加量0%の場合、崩壊にかなり時間を要します。これはメチルセルロースが錠剤形成時、高分子膜を形成し、ぬれ性が低下することで崩壊剤の働きは低下します。

    そこにノイシリンUFL2を添加すると、ノイシリンが細孔を通して錠剤内部に急速に水を呼び込む事で崩壊性が大きく改善します。粘着性の膜を形成し崩壊剤の働きを低下させる物質を含有する処方では、ノイシリンの崩壊助剤効果が期待出来ます。

     

    相性の良い崩壊剤
    別途検討において、ノイシリンUS2、UFL2と相性の良い崩壊剤を調査した結果、クロスカルメロースナトリウムとの組み合わせが最も崩壊時間が短縮され、その次にカルメロースカルシウムが改善された結果となりました。

     

    口腔内崩壊錠への応用

    弊社の口腔内崩壊錠用賦形剤のエフメルトにもノイシリンを使用しています。低圧で高い硬度が可能で、さらに崩壊性を促進させるノイシリンは口腔内崩壊錠に最適です。

    また、別ページで紹介しているようにノイシリンには固結防止効果もあり、加湿時の硬度低下や崩壊遅延の対策にも適しています。口腔内崩壊錠の開発の際にもご検討下さい。