フジシル®|吸着能を活かした苦味マスキング製剤への応用

フジシル(一般名:二酸化ケイ素)は富士化学工業の得意とする無機合成技術を用いて開発された含水二酸化ケイ素です。スプレードライ加工により、多孔質の球状顆粒とすることで、高い吸油能と優れた流動性を併せ持ち、製剤工程で扱いやすい特性を有しております。

フジシルの基本情報

製品名 フジシル(FujiSil)
一般名 二酸化ケイ素
化学式 SiO₂
公定書名 JPE:含水二酸化ケイ素
USP/NF:Silicon Dioxide
EP:Silica colloidal hydrated

 

フジシルの物性

項目 測定値
平均粒子径 80μm
乾燥減量 2.6%
pH 7
嵩比容積(疎充填) 5.9mL/g
嵩比容積(密充填) 4.9mL/g
BET比表面積 400m2/g
細孔容積 2.1cm3/g
吸油量 3.3mL/g
安息角 30°
オリフィス径 4mm

 

フジシルの特徴

吸着担体としての優れた能力

  • 吸着能が高く、流動性に優れることから、吸着担体として高い製造適性を有します。
  • 凝集を起こしにくいことから、苦味マスキング製剤の核粒子と利用することで、薬物溶液の高液速での噴霧が可能です。
  • pH7.0と中性であり、薬物との反応性が低いことから、安定性に影響を与えません。

 

添加剤としての利用

  • 従来の含水二酸化ケイ素は添加により硬度低下を示すものが多いですが、フジシルは硬度低下することなく添加が可能です。
  • 経時的な硬度低下、崩壊遅延の抑制効果を示します。

 

固体分散体への応用

  • フジシルは多孔質な無機賦形剤であるため、ポリマーと同様に非晶質状態を維持する担体として使用可能です。

 

吸着能を活かした苦みマスキング製剤への応用

フジシルは多孔質の球状顆粒であり、吸着能が高く、流動性に優れることから、吸着担体として高い製造適性を有します。フジシルに薬物とマスキング剤を吸着させることにより、苦みを低減した顆粒を容易に得る事ができ、製剤に応用することが可能です。

従来のマスキング

フジシルの場合

 

フジシルを使ったマスキング(SEM画像)

※ 左からフジシル、薬物含浸顆粒、苦みマスキング顆粒

 

苦味の低減効果

フジシルを核剤とし、流動層造粒機(ラボ機)にて製造した苦みマスキング顆粒の簡易マスキング評価を行いました。

 

製法(例)

結果(流動層造粒によるマスキング顆粒の苦み低減効果)
苦みマスキング顆粒の溶出量は薬物のみと比較し約90%の低減を示し、苦みを感じる閾値を下回りました。

シリンジ法による苦味マスキングにおける溶出の評価法
1.溶出の評価は、顆粒を注射筒に入れ、所定量の試験液を加える。
2.約2~3秒/回転程度で軽く混ぜる。
3.10秒後に溶出した量をフィルターを通してUVにて測定する。

 

 

結果(溶出性評価)

苦みマスキングを行った顆粒および錠剤に対し、溶出性の評価を行った結果、5分で90%以上溶出し、薬物の放出に影響は認められませんでした。

 

フジシルの吸着性能

高い吸油能と優れた流動性を持つフジシルは、製剤化において吸着担体として用いることが可能です。ジフェンヒドラミン塩酸塩をモデル薬物とし、転動流動層造粒機を用いて、薬物溶液を噴霧した例を紹介します。

処方
基剤 フジシル 従来品
仕込量(g) 200 300
API(g) 120 120
結合剤(g) 60 60
精製水(g) 1,020 1,020

※フジシルは嵩高いため仕込量を200gとした。

 

運転条件(スプレー方式:サイド)
項目 条件
フジシル 従来品
排気温度(℃) 26-28 46-48
乾燥時
排気温度(℃)
35 50
風量
(m3/min)
0.2-0.3 0.6
スプレー速度
(g/min)
20→15 2

 

結果

フジシルを用いた処方は、凝集を起こしにくいことから、高液速での噴霧が可能であり、工程時間の短縮に寄与致します。これにより、製造コストを大きく低減させる事が期待されます。

原薬コーティングの工程時間の比較